経済理論が胡散臭いなぁと思った人に,理論家の気持ちがわかるかもしれない本

2016-06-11 02:03:45 +0900 written by 茂樹 磯貝

Twitterやネット,その他様々な論壇において色々な方向から批判されることの多い経済理論.それほど人間を分析することは難しく,一方で経済学に期待が寄せられていることの現れだと思いますが,見ていて歯がゆい思いをすることもしばしば. この本棚では時に非現実的だと言われる経済理論を作っていく側である理論家がどのように理論を見ているのか,理論の妥当性をどのように考えているのか,すなわち理論家の心が現れているような本を挙げていきます.このような内容は研究者やモデルの応用をシリアスに考えている人向けなために,いずれも専門家向けの書籍になっていますが,そのような本について知る機会も他にもないと思い,この本棚を作成してみました.ほんの少しでも,研究者の考えが多くの人に知られる手助けになれば嬉しく思います.(例によって,読んだ本が増えていく毎に本棚も加筆していく予定です)

1 不確実性下の意思決定理論

私は原著のほうを読みました.経済学の基本である,選好や効用関数について,主に不確実性下の意思決定を題材にして議論していきます.最初の数章は非常に難しいですが,第二部のcase studyからは大学院で学ぶ理論の軽快な議論が続きます.ところどころに人間行動を選好関係や(特定の)効用関数でモデル化することの妥当性についての議論や理論というものについての筆者なりの考えが記述されており,理論を「理解」するには非常に有用な本だと思います.

2 Game Theory: Analysis of Conflict

前回の本棚でもご紹介しましたが,標準的なゲーム理論を通して,現実をどのようにモデル化して行くべきかという観点を強調している大学院向けのテキストです.Myersonはメカニズムデザインへの貢献によりノーベル賞を受賞しましたが,ゲームの帰結としてどのようなものが妥当なのかと言った,いわゆる「解の精緻化」の分野でも大きな貢献のある人物です.

3 ゲーム理論による社会科学の統合 (叢書 制度を考える)

こちらも私は原著で読みました.ゲーム理論の手法や発想を概観しながら,一つ一つの(暗黙の)仮定についての議論を加えていき,人間社会を理解する上でどの仮定が妥当で,どれがそうでないかについて論じています.最終的には様々な分野の知見を統合して人間社会の理解という問題に対処すべきとしています.現在のゲーム理論の論理的基礎の理解,そしてそこから現在のゲーム理論に何が足りないのか,といったことを考えるのに良いfood for thoughtになります.