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公衆衛生の基礎が分かる!ー医学生が伝えたい健康な社会を守る理論ー

2016-04-09 18:22:45 +0900 written by Kakimoto Keisuke

公衆衛生学は、病気を医学・社会・経済・政策・心理といった複合的な観点で捉え、疾病の予防を通じて社会全体の健康を推進する学問です。最初の3冊では、病気を医学以外の文脈で学ぶことを目的としていますので、医療関係者以外の方にも気軽に読んでいただけると思います。その後の2冊では、公衆衛生・国際保健に興味の有る方が世界の公衆衛生学の概観を把握し、予防医学の基本的理論を学ぶことを目的としております。公衆衛生関係のリサーチに興味が有る方は、この他に疫学を勉強する必要がありますが、この本棚では割愛させて頂きます。

1 命の格差は止められるか: ハーバード日本人教授の、世界が注目する授業 (小学館101新書)

社会疫学の大家であるハーバード大教授イチロー・カワチ先生の著書です。公衆衛生学の基本的なアプローチ方法や、社会経済的環境が健康に与える影響などをわかりやすくまとめているのがポイントです。また、近年研究が進んでいる行動経済学を健康増進に応用する取り組みについても触れられています。医療が専門で無い方にも理解しやすい内容ですので、健康推進に興味の有る方全ての入門としてオススメです!!「公衆衛生ってなに?」という疑問に答えられる1冊です。

2 感染宣告 エイズウィルスに人生を変えられた人々の物語 (講談社文庫)

病気が医学的問題だけでなく、多くの要因が複雑に絡まり合っていることを学んで頂くための1冊です。エイズといえばHIVというウィルスが原因となりますが、感染する理由をたどれば性交渉や薬物乱用、薬害など様々です。エイズになって生活がどう変わるかも人それぞれ。そういった1人の1人の「物語」に注目して読んで頂きたいです。普通のノンフィクション作品ですので、専門性には欠けますが、一般の方でも読みやすい本です。生々しい現実に触れて、学際分野としての公衆衛生の必要性に思いを馳せて頂ければ幸いです。

3 国家救援医 私は破綻国家の医師になった

「公衆衛生学」をツールとして、スピード感を持って活動を展開する「国際緊急援助」の現場の汗と息遣いが詰まった1冊。災害や飢饉など、個人レベルではどうにもならないことが健康を脅かすということが世界中で起きています。そうした様々な国の保健課題を提示しながら、その解決策や失敗談などが記されており、公衆衛生実務の一端を学ぶのにぴったりの本だと思います。私自身は、国際保健のキャリアを考えた時期に参考にさせて頂いた書籍で、学生時代から活発に行動されていた著者の姿に多大な影響を受けました。

4 国際保健医療学

これまでの3冊で「社会的存在としての病気」について知り、公衆衛生を体系的に学びたいと思った方は必読です。私自身は公衆衛生の良い教科書が見つけることができず、この国際保健医療学の教科書で基礎を学びました。この本では、先進国・発展途上国を含めたあらゆる国で問題となる保健課題がまとめられていると同時に、公衆衛生実務の重要な概念がわかりやすく説明されています。この教科書を通読すれば、公衆衛生の基礎はマスターしたといえるでしょう。

5 予防医学のストラテジー―生活習慣病対策と健康増進

少しレベルが上がりますが、予防医学分野の名著です。学問としての公衆衛生の面白さにあふれた1冊で、様々なデータを引用しながら予防介入を行う際に考慮すべき理論的背景がコンパクトに解説されています。特に「population strategy」と「high-risk strategy」の部分はこの本でも中心となる重要な概念ですので、しっかりと理解しましょう。ややアドバンスドな内容を含みますが、将来公衆衛生のフィールドで働きたい方にはぜひとも読んで頂きたい書籍です。