わくわくするような未知の知との出会い

会計学を知る―財務諸表にある数値の裏側を探る―

2016-01-29 00:09:14 +0900 written by 小田 勇樹

貯蓄から投資へといわれる現代において、財務諸表を読む対象者が、専門家から個人へと変化しつつある。投資を行う際、財務諸表が重要な情報源となる。なぜなら、企業がどれだけ成績を上げたか、倒産の危機に瀕していないかなどを財務諸表が示しているからである。一方で、オリンパス、東芝を例に、いわゆる粉飾された財務諸表が世の中には存在している。したがって、正確に財務諸表を読むには、一定の知識が要求される。当該本棚では、会計の初学者でも読めるような、財務諸表を読むための本を紹介していく。なお、簿記検定のような資格試験に対応した本は、ここでは紹介しないこととする。

1 財務会計講義(第16版)

本書は、大学一年生など会計初学者が読む本である。したがってここで紹介するのも在り来たりであるが、それだけ理解しやすい本である。本書は理論的な内容を記しているため、この本を読めば財務諸表を読めるわけではない。しかし、財務諸表を読むには、理論的な内容が不可欠である。したがって、理解しづらい理論的な内容を読むにあたって、最初の入り口として本書は有用である。 ではどのような勉強方法が有用か。この本を読む際には「会計法規集(中央経済社)」を利用して勉強してほしい。「財務会計講義」にある内容を読みつつ、会計のルールはどうなっているか「会計法規集」で確認することによって、理解が深まるであろう。また、この本は、会計のルールが日々変化することから、毎年改訂される。「会計法規集」を利用することによって、本を買い直さなくても、会計のルール(ASBJのHPに掲載されている)さえ読めば、ルールの変化に対応することができるであろう。

2 会計学の手法

帯に書いている通り、本書は会計学を科学的に捉える本である。具体的には「財務諸表によって経営者はどういう行動が予想されるか」「企業の利益が株価にどのような影響を及ぼすか」について、書かれている。このような分野は、国内では未だ普及しておらず、また、勉強するためには、ミクロ経済学、ファイナンス、統計学の知識が要求されるため、勉強しづらい分野でもある。本書では、当該難しい分野を入門書と言う形で提供しており、また、簡単にではあるが、統計学、ファイナンスの基礎理論について記載されている。財務諸表の数値が、経営者、投資家そして市場に対してどのような影響を及ぼすか。そのような問題に対して本書は、解決にたどりつくための入口といえるであろう。

3 エッセンシャルIFRS(第4版)

21世紀以降、会計のルールは世界間で統一しようという動きがみられている。日本も同様に、統一された会計ルールを採用しようとしている。この世界間で統一された会計ルールを「IFRS(国際財務報告基準)」と呼ばれるが、いまだ国内の大学では講義の環境も整っているとはいえず、また日本の会計ルールとは異なるため、会計を勉強した者でも理解しずらい部分もある。一方で、書店には多くのIFRS入門書が置かれているが、どの本で勉強するのが良いか悩ましいところがある。筆者の経験ではあるが、この本がIFRSの入門書として最適ではないかと思う。というのは、会計のルールには土台があって、その土台を理解することによって、細かな規則を読むことができる。本書はそのような土台が、全ページの半分を占めており、類書には見られない章立てとなっている。他の分野でもそうであるが、細部ばかり見ていても本質が分からないことが多い。会計学も同様で、細かい規則を読んでいては、理解できないし、何よりつまらない。木を見て森を見ず、本書ではそのような事態に陥ることはないだろう。

4 企業会計入門--考えて学ぶ

「手軽に会計学を学ぶ本はあるか」と言われればこの本をお勧めする。会計学と言えば、簿記の処理が多くめんどくさく、また制度であるため、暗記することが多い学問というイメージがある。そのような、イメージ(事実ではあるが)を払拭することが本書の狙いである。具体的には、会計を考えて使うことを主軸に置いて、会計の仕組みについて記載されている。本書の筆者、斎藤静樹氏は、日本の現在の会計ルールを作ったと言っても過言ではない学者であるため、日本の会計ルールの仕組みを知るには良い本である。またソフトカバーで300ページに満たない本であるため、手軽に読めるのではないかと思う。

5 新・企業価値評価

M&Aや資金投資といった、財務的意思決定(CFOがそれを行う代表例であろう)を行う際に企業価値を評価する必要がある。企業価値とは、その企業が将来どれだけお金を生み出すのかを貨幣単位で表す数値のことをいう。企業価値を評価する場合に、企業が取り巻く多くの要因を考慮する必要があるため、現場で学ぶことの方が多いと思われる。一方で、現場で学ぶと言っても、知識ゼロの状態では仕事はできないであろう。そこで本書の出番である。本書では、実際の分析や評価概念を記すとともに、価値評価の事例が記されている。また、500ページ超の本であるため、詳細な内容となっている。したがって、新書や実務書をいくつか読むよりも、本書1冊で済ませて、あとは実務の世界で学ぶというやり方が可能となる。