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現代のフロンティア「中央アジア」 ―概説書から各国事情まで―

2015-12-05 19:44:51 +0900 written by 齋藤 竜太

2015年10月、安倍晋三首相は、日本国総理大臣として初めて、中央アジア5カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン)を歴訪しました。日本ではこれを機に中央アジアに関する注目度が高まり、この地域を「親日国」としてとらえる向きもあるようです。しかし、中央アジアは地政学的な要衝であり、インドや中国、ロシアなど、地域大国の首脳もしばしばこの地域を訪れており、現地に長らく滞在している身としては、安倍首相の訪問は日本の存在感を劇的に高めたとは言えない、というのが実感です。 中央アジアは、地理的には中国のすぐ隣に位置し、いわゆるシルクロード交易を通じて古くは日本とつながりのあった地域です。その一方で、長らく旧ソ連の一部として西側に閉ざされていたことから、情報が少なく、なじみの薄い地域であるといえます。この本棚では、中央アジアを知るうえでお勧めの、概説書、事典、各国事情の分析書を挙げてあります。古くから大国がせめぎあい、文化、民族、言語が交錯した中央アジアに対する、実態に沿った理解への一助になれば幸いです。

1 現代中央アジア論―変貌する政治・経済の深層

代表的な中央アジア研究者、および実務者による概説書。政治、国際関係、経済や環境問題などのテーマに分かれており、それぞれの中央アジア事情について知りたくなった場合、本書を参照すればほぼ間違いがないと思われる。出版が2004年とやや古く、改訂版の発行が待たれる。

2 中央ユーラシアを知る事典

2005年刊。中央アジア研究に携わっていた当時の研究者がほぼ総動員して編纂した、日本の中央アジア学界が世界に誇れる一冊。中央アジア研究を志す者にとっては必携。 内容は、中央アジアに限らず、コーカサスや新疆ウイグル、アフガニスタンや、ロシア南部のイスラーム諸民族が多く住む自治共和国などにも触れている。

3 社会主義後のウズベキスタン―変わる国と揺れる人々の心 (アジアを見る眼)

ウズベキスタン出身の筑波大学准教授によるウズベキスタン事情についての本。著者は10代中ごろにソ連崩壊を経験しており、その前後の同国の変化についての記述はリアリティがある。ウズベキスタンは多民族国家で、著者の民族はウズベク人であるが、その視点から、ウズベキスタン国内の多民族へのまなざしも垣間見ることができ、興味深い。

4 中央アジア・クルグズスタン―旧ソ連新独立国家の建設と国民統合―

政治的に権威主義的な国家が多い中央アジアにあって、キルギス(クルグズスタン)は民主主義的な国家づくりを目指している。その一方、政変が繰り返されるなど、険しい道のりを歩んでいる。 本書の著者はキルギスに居住しており、本書には現地での経験、聞き取り調査に基づいた、貴重な情報が収められている。とくに後半では、政党や民族団体の指導者へのインタビューも収められており、その中にはのちに政変で中心的な役割を演じ、キルギスの現体制で中核的な役割を担った人物とのインタビュー記事もある。

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