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世界を見よう/世界から見よう!:現代アラブ編

2015-09-11 12:50:55 +0900 written by 鈴木 啓之

「アラブ」とは民族の名前です。といっても、「アラビア語を解する者」という程度のものなので、遺伝・生物学的な意味での民族ではありません。となると、どうしても言語が重要になってきますので、アラブのことを話そうとすると、アラビア語のカタカナが増えることになります。イスラム(イスラーム、と最近はのばすことが多い)、コーラン(クルアーン、と最近は書き直すこともある)、ワクフ・・・。なんだかわからなくなりますね。そんな世界を最初にのぞくのに、うってつけの本を選んでみました。どれも具体的に語りかけてくる内容で、はじめてでも取っつきやすいと思います。 ところで、ここで「中東」と「アラブ」の関係だけ押さえておきましょう。先ほどアラブは民族の名前と言いましたが、それに対して中東は地域の名前です。したがって、下の説明で私がアラブという場合には人々を、中東という場合には地域を意図していることを覚えておいてください。

1 現代アラブ・ムスリム世界―地中海とサハラのはざまで (SEKAISHISO SEMINAR)

アラブの日常生活に興味がありそうでしたら、この本を手に取ってみるのをおすすめします。編著なのですが、日常生活のなかのイスラム、ベドウィン、ジェンダー、農村など、いろいろとおもしろいトピックが並んでいます。中東のことをすこし大学で勉強したことがある人なら、並んだ著者の豪華さにも驚かされるかもしれません。同じ編者の『アラブ』(アジア読本)と『アラブ』(世界の食文化)もおすすめです。 また、すこし毛色は変わりますが、アジア経済研究所が発行していた『「あそび」と「くらし」』など、『●●と「くらし」』シリーズも一読の価値があります。こちらは他地域も含まれるので、あるトピックについて横断的に知りたいときにはうってつけです。

2 アラビア・ノート (ちくま学芸文庫)

いろいろある本のなかでも「名作」との評判が高い本です。本多勝一の『アラビア遊牧民』などと併読しても良いかもしれません。いまでは石油や金融街などのイメージが強いですが、アラビア半島でアラブの遊牧民と暮らした著者が語りかけるように書く文体が、自然とページとをめくらせます。アラビア語で「アラブ」といった場合、本来は「遊牧民」を指す言葉であったと言われます。そう考えれば、この本で描かれるのは「アラブのなかのアラブ」といっても良いかもしれません。一読の価値ある一冊です。

3 「アラブの心臓」に何が起きているのか――現代中東の実像

さて、最近の中東地域の変動から、アラブに興味を持った方もいると思います。そんな方におすすめなのがこの本です。アラブというよりも、アラブ国家、といった方が良いかもしれません。政治学のアプローチをすこし心得ていれば、この本はかなり面白く読めると思います。中堅世代の研究者が、それぞれ得意とする国を取り上げて論じていますので、書かれるテーマも最新のものです。また、中東地域の現代史をよりさかのぼって知りたいのであれば、訳書が出たロジャー・オーウェンの『中東の国家・権力・政治』を手に取るのも良いでしょう(こちらはアラブだけではなく、トルコ、イラン、イスラエルが含まれます)。情勢の変化が激しい地域ですが、歴史を紐解いてみると意外と納得することも多かったりします。

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