若者のための国際政治学 ~理論から時事を考察する~

2015-08-21 15:45:35 +0900 written by 中西 史也

 この本棚は主に、10代から20代の若者を対象にしています。若者が国際政治の基本的な知識や理論を身につけ、時事的なテーマに生かしてほしいからです。先般の安保法案に対し、大学生や高校生までもが、デモ活動で反対を表明しています。この問題で必要になる「国際政治を見る目」を本棚で提供します。リアリズム、リベラリズムといった、国際政治学で必須となるキーワードについて丁寧に説明していきます。私自身が大学で国際政治を学び始めてから出会った名著を中心に、紹介していきたいと思います。

1 国際政治―恐怖と希望 (中公新書 (108))

高名な国際政治学者・高坂正堯の名著。大学入学と同時に拝読して以来、私のバイブルでもある。「なぜ戦争の危機は去らないのか」。この根本的な問題意識のもと、国際政治を力の体系、利益の体系、価値の体系の3つの視点から考察する。これら3つは、今なお国際政治の基本的な見方である。本書は現状認識だけにとどまらない。リアリストの高坂らしい現実的な対処が述べられた終章は見物だ。

2 三酔人経綸問答 (岩波文庫)

本のおすすめ度:4.2

東洋のルソーと呼ばれた中江兆民の傑作。ある日、南海先生のもとに洋学紳士、豪傑君という二人の客が訪れ、酒を酌み交わしながら政治談議をする。洋学紳士は非武装中立の理想論を唱え、豪傑君は膨張主義的な大陸進出論で反論する。それを南海先生が調停する鼎談方式。先ほど紹介した『国際政治』で高坂は、本書で出てくる「過慮」というキーワードに触れる。洋学紳士や豪傑君のように、国際政治を権力闘争として一元的に見ることへの戒めだ。国際政治の多様さ、複雑さを再認識させられる。

3 国際紛争 原書第9版 -- 理論と歴史

本のおすすめ度:4.5

「ソフト・パワー」で有名なジョセフ・ナイを中心に執筆された、国際政治学の入門書。私のゼミの担当教授・村田晃嗣が訳しており、ゼミでたびたび扱った。国際政治の基本的な理論の紹介に加え、歴史を詳細に検証する。第3章、4章の、二度の世界大戦の分析が見所だ。大戦発生の要因を国際システム、国家間、個人、以上3つのレベルから多角的に考察する。本章を読めば、ふたつの大戦の決定的な違いについても理解が深まるだろう。年月とともに版が更新されていて、今後も色褪せない名著だ。

4 グローバル社会の国際関係論 新版 (有斐閣コンパクト)

本のおすすめ度:4.5

まさに「国際政治を見る目」を養う基本書。リアリズム、リベラリズム、コンストラクティヴィズムといった理論を分かりやすく解説する。第2章のコンストラクティヴィズムの説明が見所だ。この理論は、主に冷戦後に普及した新しい考え方である。中江兆民の時代にも、高坂が『国際政治』を著した時代にも、この概念は存在しなかった。古典的なリアリズム、リベラリズムとの違いを考えながら読み進めてほしい。