わくわくするような未知の知との出会い

現代の素粒子論への道しるべ

2015-08-02 21:49:22 +0900written by 三原 健太郎

世の中の物質は果たしてなにからできているのだろうか。今あなたが座っている椅子や、道端の雑草、空に光る星など、我々の周りには数えきることができないほどの物質が存在するが、現代の物理学ではそれらは18種類の「素粒子」と呼ばれる最小構成要素を持つと考えられている。それらは現在「標準模型」と呼ばれる理論モデルで説明されており、特殊相対性理論的な「場の量子論」で記述されている。場の量子論、素粒子論を学ぶにあたって多くのテキストが存在するが、ここでは私が実際に研究室でゼミナールを通して使用した本を紹介することで、素粒子論への道しるべの一例を紹介していきたい。一冊目を読むために、2冊目以降の準備が必要になるだろう。

1Relativistic Quantum Mechanics and Field Theory (Wiley Science Paperback Series)

この本は熊本大学素粒子研究室で私が実際に学部4年生を通じて使用したテキストです。全17章のうち、14章まで学習しました。このテキストは非常に説明(特に計算過程)が丁寧に書かれています。学習した感想として、10章の量子電磁力学(QED)での計算が一つの大きな到達点だと思われます。そこに到達するために、本の前半で相対論的な「場の量子論」(具体的にはクライン・ゴルドン場とディラック場)が、9章では粒子間の相互作用を記述するための「ファインマン図」が丁寧に解説されています。(例えば場の量子論についての有名な専門書「Peskin」のテキストはいきなり場の相互作用の説明から入り、後から解説してあるので場の理論一冊目としては面食らう可能性があります。) 10章以降では、11、12章、16章は繰り込みといって、ファインマン図でループが出てきたとき、理論の中に無限量が出て来てしまう破綻についての解決法が書かれていますが、まずは概念だけ理解して、余裕があれば戻るくらいでいいかと思います。 本の後半で興味深いのは13章の対称性についてです。標準模型で出てくる3つの力(強い力、弱い力、電磁気力)は理論に「ゲージ対称性」というものを課すことによって理論の中に現れます、この「対称性」というものは現代物理においてとても重要な概念であり、この本の中でも重要な部分です。 14章は話が一転し、標準模型への別のアプローチの仕方、「経路積分」の説明がなされています。 この本は学部生でも4年生、大学院1年生くらいが対象のテキストになるかと思います。 この本で場の量子論を学ぶ前に、物理学の基本的な知識が必要になります。それは「解析力学」、「量子力学」、「特殊相対性理論」、「電磁気学」の分野です。以下の本は、それらを学ぶために、実際に私が講義を通じて読んだもの、もしくは非常に評判のいいものを紹介していきます。

2電磁気学 (物理テキストシリーズ 4)

本のおすすめ度:4.6

このテキストは大学1年生から2年生くらいにかけて講義を通じて学習した一冊です。マクスウェル方程式の導出を大きな目標として、それに至るまでの計算式や考え方がとても丁寧にかかれています。電磁気学を学ぶにあたって必要な数学的知識(例えば発散やローテーション、ストークスの定理など)も詳しく記述してあるのでとても分かりやすいとおもいます。電磁気学の知識、数学的なテクニックは場の量子論のテキストでは既に知っているものとして扱われることがほとんどなので、一読しておくことをお勧めします。

3解析力学 (裳華房フィジックスライブラリー)

理工系の学生は、解析力学を理解するのに苦労した人も多いと思います。私もそのうちの一人です。解析力学は、高校までに授業で学ぶ機会はありません。大学に入って、いきなり出てくる考え方ですが、非常に重要(自分は大学で学ぶ物理で一番重要であると考えています)だと思います。ラグランジアン、ハミルトニアン、作用を用いた記述は場の量子論のテキストでは何の断りも無く出てくることが多いので、この本を一通り読んでおくことは助けになるでしょう。解析力学から量子力学へと移行する部分(量子力学の入り口)まで丁寧に解説してあります。一通り読むのはとても大変ですが、分からないところはその都度インターネットで調べたり、根気づよく取り組むことが必要です。

4量子力学

本のおすすめ度:4.6

この本は、私が大学2、3年を通してゼミナールで使用していたテキストです。量子力学は範囲がとても広く、この本もページ数が多くなかなか取りかかりにくいテキストです(隅から隅まで読もうとすると大変なので、辞書の用に使ってもいいかもしれません)。ただ、丁寧な計算過程が書かれていること、章末問題の解説も詳しいことなどから、独学で勉強するにはいいテキストだろうと思います。少し「お堅い」テキストであり、前置きに「大学3、4年を対象にしたもの」と書いてあるので量子力学についてはもう少し初学的なもの、例えば原田 勲著  量子力学1 (講談社基礎物理学シリーズ)なども平行して読むと少しは緩衝剤になってくれるでしょう。 本の内容については、すべての章が重要ではありますが、5章の「摂動論」、7章の「散乱の一般論」が場の量子論を学ぶにあたっては特に重要になるかと思います。