わくわくするような未知の知との出会い

教養としての科学的心理学: 「人間」とかかわるすべての人へ

2015-12-11 19:20:25 +0900written by 田中 涼介

宇宙=マクロコスモスと対比して、人間の心や脳のことをミクロコスモスと呼ぶことがあります。そんな「ミクロコスモス」の研究である心理学は、したがって非常に多岐にわたる内容を含みます。一方で、世間の「心理学」のイメージはともすると「自己啓発」的な内容に偏りがちです。しかし、人間の行動や心の働きについて、きちんと確かめられた知識を持っておくことは、心理学者だけでなく、人間を相手取る他の学問やビジネス等に携わるあらゆる人にとっても有用なはずです。そこで、この本棚では、アカデミックな心理学者が抱く標準的な「科学的人間観」を共有することを目指し、知識ゼロの状態でも手軽に読みこなせる入門的な書籍をピックアップしました。

1サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ (中公新書)

本のおすすめ度:4.4

【必読】現代の心理学の重要な前提は「人は自分の心のことをわかっていない」という点にあります。本書はこの”ドグマ”を基礎づける経験/実験的事実を非常に広範な心理学のサブジャンルにまたがって(しかも面白く!)紹介してくれる、スタート地点として絶好の一冊。ただしやや古いので、同著者の『意識とはなんだろうか』(講談社現代新書)もアップデート版としておすすめ。

2進化と人間行動

本のおすすめ度:4.4

【必読】心理学も含めた生物の研究における問いは、「メカニズム」と「進化」についての問いに大別できるとされています。前書がもっぱら「心/行動のメカニズム」を扱っているのに対し、本書は「何の役に立つのでどう進化したか」という逆の観点から人や動物の行動を描き出します。人や動物の「人助け」がどうして生じうるかがシンプルな数学的モデルから導出される様子に、知的興奮を与えられるだけでなく、人間観も揺さぶられること間違いなしです。

3進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)

【必読】心と脳をコンピュータになぞらえれば、脳がハードで心はソフト。ソフトウェアたる心を理解するためにはハード=脳についての理解が必須、ということはここ数十年の技術的進歩にともなって心理学界でも常識となっています。「脳科学本」は特に玉石混交(玉:石=1:9位?)なジャンルですが、著者はすさまじい研究業績をあげながら他方でキャッチーで面白い本を書きまくっている稀有な脳研究者。同じブルーバックスの『脳研究の最前線』はもう一歩踏み込んだ内容でこちらもおすすめ。

4認知心理学 -- 知のアーキテクチャを探る 新版 (有斐閣アルマ)

【おまけ】これまで紹介してきた書籍が依拠する「脳:心=コンピューター:情報処理」というアナロジーを基礎とする心理学のパラダイムを『認知心理学』と呼びます。『サブリミナル・マインド』でこの分野に興味を持った方に、一番手頃な教科書。

5Sensation & Perception

【おまけ】心理学のもっとも基礎的な一つの重要な問いが、「我々はどうやって物を感じているのか」、すなわち感覚/知覚の研究です。本書は分厚い洋書の教科書ですが、フルカラーで膨大な量のイラストと非常に親切なWeb教材がついてたいへん読みやすく、ここまでのReadingで本格的に心理学を勉強したくなった人に是非オススメの一冊です。知覚に興味は出たけど、ここまではちょっと…という方にはニュートン別冊『錯視と錯覚の科学』をお勧めします。