わくわくするような未知の知との出会い

日本人がペンギンから生態保全を考える道のり

2015-11-07 20:28:37 +0900written by 石井 孝侑

この本棚の目的は、保全生態学という聞きなれない言葉を噛み砕き、幅広く知って頂くことにある。この学問は、動物保護のように特定の種だけを保護・保全するのではなく、生態系全体のバランスを維持する分ことを目的とする。したがって、生態系一般に関する知識に加えて、特定種の生態に関する知識も必要とされる。私はその中でも、ペンギンという種からこの保全生態が抱える問題に取り組んでいる。そのため、この本棚では主にペンギンというレンズを通して、生態保全や動物保護、時には社会問題などを考えたいと思う。

1ペンギン救出大作戦

『ペンギン救出大作戦(海洋工学研究所出版)』 この本では、ペンギンの保護の最前線を知ることが出来る。題材となっているのは、2000年にケープタウン沖で実際に起こった重油流出事故であり、内容はその事故にに対応したNPOの活動を詳細に記録したものである。写真やグラフを用いて、非常に分かりやすい説明になっているので、問題意識を持つための最初の1冊としては最適な本。私は、この本を読んで、実際に南アフリカへ行き、その団体で働いてきた。この本がなければ、ペンギンの保護や生態保全に興味を持つことはなかったと思う。また、衝撃的な内容だけでなく、ペンギンの取り扱い方など他の本にはない実践的な情報も多かったので、実際にボランティアに参加する際には必ず読みたい一冊。

2ペンギンの世界 (岩波新書)

この本では、「ペンギンとは何か」が学ぶことができる。ある種を保全するためには、彼らの暮らしを丸ごと学ぶ必要がある。とりわけ、ペンギンは海と陸の両方で生活をするため、人間が見えているところと見えていないところが確かに存在している。この本の著者は国立極地研究所などと共同研究をすることで、今まで見ることが出来なかった海の中でのペンギンの生態を明らかにした。この本では、その明らかになった生態を人間との関わりといった切り口で説明した点に目新しさがある。また、この本を手に取られた際は、是非第4章の「なぜ飛ばなくなったのか」だけでも目を通して欲しい。きっと長年のモヤモヤが晴れることと思う。

3ペンギンガイドブック

この本は、今まで挙げた本の視点を少し変えて、幅広くペンギンについて勉強するのに適している。イヌやネコを一括りで語ることが難しいように、ペンギンも同様に多くの種類が存在し、生息地も生態も全く異なっている。今まで挙げた本は、一般的なペンギンに対する誤解について解説することや、著者の体験談に基づいた解説が主であった。これらは読者に分かりやすい「あるある」を解説したに過ぎなかった部分がある。一方、この本は写真家でもある著者によって、世界中のあらゆるペンギンが網羅的に取り上げられている。そのため、学名や分布だけでなく、実際の姿を写真で確認し、差異を自分の目で確認することが出来る。英文で全ての説明が書かれている点も非常に便利である。ケープタウンでもっとも重宝した本の一冊。

4ペンギンのしらべかた (岩波科学ライブラリー)

本のおすすめ度:3.8

この本では、タイトル通り「ペンギンの調べ方」を知ることが出来る。先述したように、海の中でのペンギンの姿を捉えることは今まで非常に困難であった。しかし、今では彼らの多くが海中を秒速2メートルから3メートルで泳ぎ、中には600メートル以上も潜る種類があることも分かっている。それらを可能にしたのは、バイオロギングという技術であり、この技術は日本の企業と国立極地研究所が1990年代に確立したものである。この本では、バイオロギングに用いる器具の解説や開発の経緯などを知ることが出来る。その過程で、なぜペンギンを調べる必要があったのかや、どこまでがわかっていて、どこからが分かっていないのかなどの境界線を明確にすることが出来る。