わくわくするような未知の知との出会い

精神看護を現象学で読み解く

2015-11-03 18:52:25 +0900written by Ikeda Yuko

幻覚・幻聴の症状がある人に対して、その症状がない人から客観的に見ると、そんなものなどない、と考える人が多いかもしれません。認知症の人、寝たきりで言葉すら発せずにいる人、精神疾患を抱えた人、それぞれ一人一人、その人が感じる世界があります。客観的に見てわからない世界を、本人は必ず感じています。「ありもしない」と他者が感じてしまうかもしれない世界は、本人にとっては実際あるものとして、存在しているのです。患者さんと関わる看護師は、その人が感じている世界を、あるがままに理解しようとする現象学的視点が大切だと考えています。一見難しそうな現象学ですが、看護を学ぶ人にとって、とても大切な視点です。そして精神看護において、特に重要なアプローチになります。現象学は難しくない、むしろ理解できると、これこそが身につけるべき視点だったのだと、気付くことができるはずです。

1傷と再生の現象学 ケアと精神医学の現場へ

患者さんと医療スタッフとの間で起こることを挙げながら、傷つくことも、治癒することも含め、人間は変化するものであることを現象学的視点から分かりやすく描いている。人の心は、人との関わりの中で絶えず変化していくことを教えてくれる。看護師の働きかけが、患者さんへ影響力のあるものとして届くということを改めて感じた。

2自閉症の現象学

本のおすすめ度:4.5

自閉症の方が経験している世界について書かれている。現象学的に理解を深めていくことができる。自閉症の人がどのように自分を知覚しているのか、どのように成り立っているのか、その世界に入り理解への手掛を得ることができる。症例もありわかりやすい。自閉症の方と関わる時の参考にもなる。

3語りかける身体―看護ケアの現象学

現象学の哲学者としてメルロ・ポンティという哲学者がいる。私が看護という学問を現象学的観点から見てみようと思い始めたのは、大学1年生の頃、看護ではなく哲学の授業でメルロ・ポンティの考え方に出逢ったのがきっかけだ。現象学と看護を融合した時、現象学を唱える他の哲学者に比べ、より看護的視点に近いのがメルロポンティだと個人的に感じているが、メルロポンティが看護の授業で登場することは少ない。看護における現象学を説明しても、メルロ・ポンティにおける現象学を説明してくれる看護教師はあまり多くはない。 この本にはメルロ・ポンティが登場する。看護を学ぶ者として、現象学をメルロ・ポンティから学ぶことは大きな助けになる。看護と現象学をわかりやすく読み解いている本である。

4超解読! はじめてのヘーゲル『精神現象学』 (講談社現代新書)

本のおすすめ度:3.9

精神の成長過程を、現象学の視点から、自分が体験するような形で読み進めていけるような本。何かを発言する時、何か行動を取る時、そして何かの感情が生まれる時、そこに至る人の精神にはどのような変化があり、どのような過程を追うのか、気になっていた頃、現象学で読み解けないのかと考え出逢った本。精神と現象学の繋がりを再認識することに繋がった。 「意識」を主人公とし、様々な経験を追体験することで、精神的な成長過程を追って行く。何が正しいかの判断ではなく、その人が正しいと思った道が正しいということ、つまり、客観的に見てどうであれ、その人の信じる世界がその人にとっては正しいのだという、現象学的思考が含まれている。精神現象学の理解を深めてくれる。現象学は何か、ということについて理解した後に読むと良い。

5治癒の現象学 (講談社選書メチエ)

少し難解だが、現象学と精神看護の繋がりが深まった後に読むと理解が深まり面白く読むことができる。その人の世界をその人の経験から理解する、という現象学をもって、治癒、治る、回復する、とはどのような現象かについてプロセスを追い書かれている。レヴィナスやメルロ・ポンティとの繋がりも見える。同本棚に挙げた『傷と再生の現象学』『自閉症の現象学』と同じ著者であり、精神医学的観点も含まれている。

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