わくわくするような未知の知との出会い

文化系のための21世紀女子カルチャー入門

2015-08-26 10:09:11 +0900written by 己斐 裕一

「女子」という言葉が広く使われるようになって久しいですが、この言葉が意味するところを正確に説明できる人はなかなかいないのではないでしょうか。戦後日本において女性は消費資本主義経済を牽引し、衣・食・住のすべてにおいて、世界でも稀に見る極めて豊かな文化風俗を作り上げてきました。オリーブ少女、ギャル、ゴスロリ、美魔女・・・と、日本において女性が形成した社会/文化グループのバリエーションは枚挙に暇がありませんが、21世紀に入ってから、このグループ形成は「○○女子」としてさらに細分化・先鋭化しているように感じられます。 なぜ、このタイミングで「女子」が前面に現れてきたのか、この言葉の来歴と射程を学ぶことは、現代日本の文化・社会を理解するうえで不可欠であるように思われます。

1Moeurs 女子ファッション徹底研究

女子カルチャー分析の切り口として最もわかりやすいのがファッションに基づく分類である。 この本は、ちまたの女性ファッション文化を多くの人が理解できるよう、ハイティーンから20代の女性ファッションを全10系統に分類して紹介している。 どのような種類の女性ファッションが存在し、それらはどのような生活様式や社会的地位と紐づいているのか理解しておくことは、本格的な女性文化研究書を読んでいくうえでの前提知識となるので、入門編として。

2ギャルと不思議ちゃん論―女の子たちの三十年戦争

タイトルのとおり、「ギャル」と「不思議ちゃん」を若い女性の2大文化/社会勢力であると措定し、それぞれの進化と相互作用、生態系の歴史の比較を中心にしながら、80年代〜00年代にかけての女子カルチャーの変遷を描出している。 豊富な言説分析と統計に基づいて骨太な議論が展開されており、かなりアカデミック寄りの女子スタディーズ本。

3日本の女は、100年たっても面白い。

本のおすすめ度:3.2

「草食男子」「肉食女子」の名付け親でもある深澤さんの著書。 明治から平成まで連なる個性的な女性たちの系譜を追っている。アキンド女(eg. くらたま)、サムライ女(eg. 香山リカ)というカテゴリを導入し整理を試みている。 あえて苦言を呈せば個々人を当時取り巻いていた社会文化環境に関する情報の記述が薄いのでバイオグラフィーの羅列になっている印象を受ける。 とはいえ基礎知識のインプットには有効であり、女子カルチャー研究の入口となりうる。

4「女子」の誕生

2015年時点で出版されている中では、最も進んだ女子カルチャー研究書のひとつだろう。 本書では、「○○女子」としてしばしば語られるカテゴリをいったん廃して、「女子」なるものに真っ向から切り込むというアプローチがとられる。そして、2010年代の女子カルチャーの震源地は、伝統的な意味でのギャルでも不思議ちゃんでもなく、アラサー~アラフォーの「大人女子」文化圏であることを指摘する。 確かに、近年語られる「女子」を取り巻く言説の特異さは、この言葉が指示する対象が以前と比べて格段に幅広くなっていることにあることに思い至る。平たく言えば、オバハンも含めて女子と名指されるようになっているということだ。この本質をガッチリ捉えたうえで現象を掘り下げているのが筆者の偉大なところである。 本書の主な分析対象はファッション誌であり、各雑誌を女子文化の進化を表象するモジュールとして捉え、周辺の文化政治経済的背景を補っている。