わくわくするような未知の知との出会い

環境評価と民主主義

「時代に合った環境政策を行うために」

(トビタテ留学時 台北・陽明山国家公園管理処にて)

今回のコラムは「ミクロ経済学~知識ゼロから本質を学ぶまでの道筋~」「持続可能な社会の実現に向けて~環境経済学のアプローチ~」という本棚を作成いただいた矢野さんに書いて頂きました。本棚だけでは伝わらない、本棚や専門領域への情熱や背景を覗いてみましょう。

 

【自己紹介】

京都大学農学研究科生物資源経済学専攻修士1年の矢野圭祐です。環境経済学が専門で、ミクロ経済学&計量経済学の理論をベースとし、統計ソフトウェア(Stata)を用いて、環境評価(特に国立公園・世界自然遺産の経済評価)を行っています。現在は、2016年3月に発表された世界自然遺産屋久島の入山料導入に関する調査・研究を進めています。

(カナダのバンフ国立公園・ランドル山 米国留学時に訪問)

【環境経済学と環境評価】

環境経済学は、環境問題を経済学の観点から分析する学問です。環境経済学の課題は主に3つあり、

①    環境問題が生じる経済メカニズムを解明し、環境問題の原因を明らかにする
②    環境問題を解決するための具体的な政策手段を明らかにする
③    持続可能な社会を実現するために何が必要なのかを示す

ことを分析しています。(参照:「環境経済学をつかむ」栗山浩一・馬奈木俊介著)

私が専門に研究している環境評価は、環境経済学の一分野で、価格が存在しない環境の価値を金銭単位で評価しようという試みです。環境評価には、人々の経済行動を観察して環境の価値を間接的に評価する方法と、人々に環境の価値を直接たずねて評価する方法があります。

これらの評価手法を駆使して、国立公園や世界自然遺産の経済評価を行い、政府が提供する公共プロジェクトに対して費用便益分析を用いることが私の研究目的です。

(支笏洞爺国立公園 洞爺湖に浮かぶ中島にて)

【環境評価の社会的意義】

環境問題の背景には、環境がタダとして扱われてしまう経済の仕組みがあります。ミクロ経済学で「市場の失敗」と呼ばれるこの現象を解決するためには、環境と経済という異なる性質のものを同一の基準(つまり金銭単位)で評価することが必要です。

たとえば、地球温暖化によって洪水や渇水などの災害が生じると、多額の損害が生じることが予想されます。また、多数の野生生物が絶滅するなどの生態系への影響も無視できません。

こうした環境破壊の損害額がどのくらいかを示さなければ、具体的な環境政策も進まないため、環境評価手法を駆使して、環境の持っている価値を金額で評価する必要があるのです。今日では環境評価はさまざまな環境政策に用いられています。

(母校の高校でのキャリア教育プロジェクト「集い」 筆者は創設者兼初代実行委員長を務めた。 写真は第一回開催時のもので、今年で5年目を迎える)

【どこに惹かれたか】

意外に感じられる方が多いかもしれませんが、私は環境評価の民主主義的なところ(一人ひとりの評価が反映される)が好きです。1990年代以降、地球温暖化や生物多様性の喪失などの地球環境問題に対する関心が高まる中で、時代のニーズに合った政策を実行していくために、野生動物や生態系などの価値も評価できる環境評価手法が果たす役割は拡大していくことでしょう。

実際、日本でも公共事業の妥当性を問う住民投票に代わる意見表明として、最近CVM(仮想評価法と呼ばれる環境評価手法の一つ)による環境評価の試みが多数行われるようになりました。

(国宝瑞巌寺にて 松島地域活性化プランコンテスト参加時)

【専門を決定するまで】

こんなにつらつらと環境経済学のことを書いていますが、大学入学時は環境問題に全く興味がありませんでした。私は高校卒業後、秋田県の国際教養大学に進学したのですが、入学後の一年間は英語漬けの毎日で、その頃の興味分野は教育・歴史・国際関係でした。

そんな中、環境問題に興味を持ち始めたきっかけは、学部2年の終わりに、ある教授に紹介された「文明崩壊(ジャレド・ダイヤモンド著)」という本です。とはいえ、それですぐに環境問題に関心が移ったわけではなく、地域活性化→ビッグヒストリー→高齢化社会を経て、やっぱり自分は将来世代のために働きたいと思い至り、環境経済学に辿りついた感じです。

ちなみに経済学・環境経済学の勉強を始めたのは米国留学から帰国後、学部4年秋学期からです(このため卒業は一年遅れ、今も専門性を身に付けるために必死で毎日を過ごしています笑)

(秋田県由利本荘市の集落にて 高齢化社会に関する日米比較研究PBL参加時)

【読者へのメッセージ】

自分のやりたいことを見つけるのってすごく大変だと思います。ただ、だからといって逃げていてはいつまでたってもやりたいことは見つかりません。

私自身、大学4年間かけてやっと見つかったという感じです。私の経験上、自分がどんな人間で何がやりたいのかを知るためには、沢山の人に会い、様々な場所を訪れ、その時自分が興味のあることに全力投球することが一番の近道ではないかと思います。

 

矢野さんの本棚を読む

「ミクロ経済学~知識ゼロから本質を学ぶまでの道筋~」
「持続可能な社会の実現に向けて~環境経済学のアプローチ~」

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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