わくわくするような未知の知との出会い

途上国のし尿処理技術の改善

「濁った川の水が生活のために直接使われている」

今回のコラムは【環境学ってなんなのさ??】という本棚を作成いただいた西田さんに書いて頂きました。本棚だけでは伝わらない、本棚や専門領域への情熱や背景を覗いてみましょう。

 

自己紹介

こんにちは。西田卓弘です。京都大学大学院地球環境学舎にて水・衛生に関する研究を行っていました。現在は上下水道プラント関係の仕事に携わっています。

 

衛生工学??環境工学??

衛生工学とは、もともと土木工学の親戚みたいなもので、一般的に下水道・上水道に関する分野の学問を指します。近年では環境工学という名称で扱われることもしばしばあります。もっとざっくり言いますと、排泄物(以下し尿)などをどのように処理するか、そしてどう人々の生活へ飲み水や生活用水を提供するかということを扱う分野です。

 

(試料採取の様子)

トイレの種類 =し尿処理技術の種類

し尿処理という技術は、トイレの形態によって異なります。日本では下水道に接続されたトイレ、浄化槽が接続されたトイレ、汲み取りトイレがあり、それぞれ処理技術が異なっています。一方で多くの新興国が集まる東南アジアでは、腐敗槽というタンクが接続されたトイレが主流であり、そのし尿処理技術は前文で挙げた日本の場合とは異なります(腐敗槽についての説明は割愛します)

 

し尿の個性~途上国のし尿の特徴把握~ 

日本を始めとした先進国においては、し尿処理に関する十分な知見があるために適切な処理を行えます。一方、途上国では知見が不十分です。そのため、適切な処理を施されていないことがしばしば見られ、水環境が悪化します。もしも途上国のし尿の特徴を正確に知ることができれば、最適な処理を適用することができます。そこで私は、途上国での知見を十分に蓄積するためにベトナムへ赴いてし尿の採取を行い、理化学分析・統計学を駆使して途上国のし尿の特徴把握を行いました。

(試料分析の様子)

ゆとり教育、ありがとう

私が環境問題へ興味を持ったきっかけは小学校での総合学習で地球温暖化、森林破壊、砂漠化について調べ学習をしたことです。総合学習と言えば、ちょうどゆとり教育のカリキュラムとして義務教育へ導入された科目です。私の通っていた小学校の総合学習では一人一人がテーマを自由に決めて調べ学習を行っていましたが、私は自然の中で遊ぶことが好きだったということもあり、環境問題を総合学習のテーマとして選びました。そして地球環境問題をすごく簡単にではありますが、知ることになりました。総合学習を導入してくれたゆとり教育には感謝しています。そして高校での進路選択は環境学に関して学べる大学を選びました。

環境学の中でも特に衛生工学へ興味を持ったきっかけは、学部生時に所属していた国際ボランティアサークルです。ボランティアでフィリピンへ赴いたとき、排泄物などで汚染された川を目にしたことです。その濁った川の水が生活のために直接使われているという事実に衝撃を受けました。そしてそのときから、将来は衛生問題を解決できる人になりたいと、漠然にではありますが考えるようになったのです。

本棚への思い

環境学は工学、理学、農学、経済学など多様な分野の基礎・応用から成り立っており、多岐の分野から抽出された比較的新しい学問です。私は環境問題について万人が詳しくなる必要はないと思いますが、現代の地球で何が起こっているのかということを地球市民として最低限は知っておく必要があると思っています。そこで、私はこの“環境学”の本棚が環境問題へ興味を持つワンステップあるいは基礎知識をつけるきっかけになればいいなと思っています。そしてさらに、私の専門分野である衛生工学(環境工学)へ興味を持っていただけたならば、それほどうれしいことはありません。

 

西田さんの本棚を読む:【環境学ってなんなのさ??